代表 根津 美保さん
佐渡ビジネスコンテスト2025
受賞されたビジネスプランをご紹介ください。
佐渡市を中心とした地域限定旅行業
課題解決型の「島外の需要を取り込み島内の経済及び雇用を拡大させる事業」として、佐渡市を中心とした地域限定旅行業行うこと、また多言語(日本語・英語・中国語)でのサポートを通して観光客及び佐渡の事業者双方の不便を解消すること、オーバーツーリズム抑制と経済活動の両立など。また、障害を持つ人やその介助者、家族などのニーズへの対応、佐渡の希少性を活かすツアーの開発(日本人が逆に意識しないような感動ポイント)など。
佐渡ビジネスコンテストへ応募したきっかけを教えてください。
元々佐渡に住んで仕事をするにはどうしたら良いのか様々なパターンを模索していた時に、これまでの人生を振り返り自分の棚卸をする中で、佐渡の自然や文化を様々な人に伝える仕事ができないか、と考えました。
その為には、どこかに属して働く方法もありましたが、せっかくやるなら、旅行業の資格を取得し、自分たちのオリジナルなツアーをできるようになりたいと思い至りました。
とは言え、私は大学を卒業してから最近までずっと海外で居住し仕事をしていた為、日本の法律にのっとって準備をしなければいけないことが膨大にあることに気付き、急いで帰国して、そこからは旅行会社で働かせてもらいながら旅行業について勉強して国家資格を取得し、佐渡への移住に向けても準備を進めてきました。
この準備の期間は正直に言うと、楽しいものではありませんでした(笑)。ただ一言で「様々な人に佐渡の素晴らしさを伝えたい」などと表現しても、旅行業となるとそう簡単ではありませんでした。実際にはわからないことだらけで、調べれば調べるほど、「このままではあれもできない、これもできない」と危機感を覚える毎日で、「これまで積み上げてきた自分たちの経験を活かしたい」と思っていたはずなのに、どんどん現実の波に飲み込まれて「自分の経験も良さも何も活かせてないし繋がってないのでは?」と自分を疑う毎日でした。とにかく辛く長い日々で暗い洞窟をあてもなく歩いているようなそんな感覚でした。
そんな中で、何とか国内旅行取扱管理者の国家試験に合格することができ、一息ついたところでビジネスコンテストの存在を知り、「課題解決型」のビジネスとして、「佐渡での旅行業」が当てはまるとわかり、思い切って応募してみることにしました。この時は、「もうここまでやったんだから、関係するイベントにはできる限り積極的に参加して、自分の今の位置を知りたい」というような気持ちでした。少しほかの参加者の皆さんとは動機が違ったかもしれません。
ですが、コンテストに応募する前段階でオンライン面接があり、その中で「金山の世界遺産をきっかけにインバウンド関係をやりたい人はたくさんいる。でも、その中であなたはとてもユニークなアイデアを持っていて実際に多くの外国人と接してきた経験や情熱もある。是非挑戦してみてはどうか」と思いがけない言葉をかけていただいたのです。この時は、本当に嬉しかった。自分の中でこの方向で合っているのか?と自問自答していた時でもあったので、客観的に認めてもらえたような気がして、また一歩を踏み出す勇気をいただけたような、そんな分岐点がこの佐渡ビジネスコンテストでした。
コンテスト本選審査へ進まれる中で課題などはありましたか?
やはり、膨大な提出書類の中の「事業計画書における具体的な数字」は大きな課題でした。発表のスライド作成や計画書の中の「動機」など気持ちの面を書くことは自分にとっては難しい事ではありませんでしたが、数字でどうしても手が止まってしまい、なかなか進みませんでした。ビジネスをしようとしているのだから、計画書の中で「数字」が重要なのは言うまでもありませんが、とにかく全くの未経験分野でハッキリ言ってちんぷんかんぷんでした(笑)。何度も何度も佐渡市の担当スタッフさんに電話やメールで質問をし、考えて作成し提出し、修正してもらって手直しし、また質問をし・・・というような日々が延々と続いたように思います。
コンテスト後のNEXT佐渡のフォローアップなど、その印象や感想を教えてください。
コンテスト後には、起業家合宿に参加させていただいたり、オンラインでのコンサルを受けさせていただいたり、佐渡に来やすいように手厚くサポートしていただいています。
なぜ佐渡で事業を展開されようと考えたのでしょうか?
まず、「佐渡に住みたいから」というのが答えになります。
「佐渡に住むためには」というのが第一にあって、次に「では何をするのか」を模索し始めました。従って、言ってしまえば事業を展開するというのは出発点ではなく、佐渡に住むためには働く必要があり、働くためには自分たちに何ができるか考える必要があり、その答えが「旅行業」だったという感じです。私は大学卒業後すぐに海外に出て長らく働いていましたが、今思えば逆バージョンで「海外に出たい!」「その国に住みたい!」と思っていたわけではなく、追求したいことがあって、それができるのがそこしかなかったという順番でした。
計画性がないとも言えるかもしれませんが(笑)、いつも「最初の動機」を大事にしています。
佐渡は私の母の実家であり、幼少期から毎年通い続けた、大好きな祖父母に毎年会える夢のような場所でした。泳ぐことや潜ることも、全て佐渡で祖母に教わりました。そしてその時からずっと祖母に「早く佐渡に来て一緒に住もう」と言われており、それは大人になっても毎年続きました。私は海外で働いていましたが、国際電話で時々祖母と話していました。「おばあちゃん元気?」と聞くと、いつも答えは「いつ佐渡に来る?」「おばあちゃん、待ってるよ」というものでした。しかしながら私は当時仕事に熱中しており、なかなか佐渡に遊びに来るのも難しく、「佐渡に住む」というのは頭の中にありませんでした。そのうち長い年月が経ち、祖母が突然亡くなりました。訃報を受けてすぐその日に空港に走り航空券をなんとか手配して帰国し、佐渡に向かいました。つい先日話したばっかりなのにと信じられない気持ちでした。
祖母が亡くなり、私がどれだけ祖母に、そして佐渡という場所に支えられていたかがわかりました。毎年帰れる場所がある、毎年泳いだ海や、美しい田んぼや、佐渡の人たちを含めた様々な風景が今もそう変わらずあり続けてくれることのありがたさをその時も今も実感しています。五感を刺激し感性を揺さぶる圧倒的な自然と少し寂しいような懐かしいような何とも言えない郷愁のようなものが佐渡にはあると感じます。離島なんだけどリゾートともまた違った「日本オブ日本」のような場所で、それは実は日本の中でもとても貴重だと感じます。人生の中で、そういう「心のふるさと」のような場所があるというのは幸せなこととも思います。だからこそ、旅を通じて佐渡を訪れた人にも、初めてなのに懐かしいようなホッとするような心静かに過ごす体験をしてみていただきたい、と思い至り佐渡での旅行業にたどり着きました。
時間はかかりましたが、佐渡に帰って来ることができ、本当に日々静かに幸せを感じています。
佐渡で事業展開することのメリットや魅力とは何がありましたか?
やはり自然環境がとても良いにもかかわらず、意外と便利なのは大きな魅力だと思います。日本最大の離島だけあり、車は必要ではありますが、お店も十分にあり便利さも自然の雄大さも両方同時に感じることができるのは本当に素晴らしいと思います。朝、鳥の声と風の音で目覚め、仕事をして必要があれば市役所や銀行・買い物などに出かけ、海沿いの道を車で走りながら夕日を見て、家の上空をトキが飛んで巣に帰るのを見上げ、夜はカエルの声と風の音。そんな毎日はとても贅沢だと日々感じています。私は旅行業ですので、許認可や旅行業協会への加入や支払いなど様々な手続きがありますが、今はほとんど申請も支払いもオンラインでできるので、今のところ「離島だから何から何まで時間がかかって大変だ」というような経験はしていません。
また、佐渡で事業をしている方々と知り合えるきっかけも多いと感じます。ビジネスコンテストでも、出場者皆さんが個性的でとても素敵でしたし、移住推進課でも様々なイベントを通して移住者にも佐渡に慣れて楽しんでもらおうという環境設定をしていただけて、なんというか市を上げてウェルカムな雰囲気があるように感じます。事業をするにはやはり横のつながりが非常に重要だと思いますが、そこを築きやすいのは佐渡の魅力だと思います。
私自身がまだ事業の準備段階で、実績もないのであまり具体的なメリットを説明できず申し訳ないのですが(笑)、これから益々佐渡のメリットや魅力を感じていけるはずです。
最後に、これから佐渡ビジネスコンテストに応募される方、
または応募を検討されている方へのメッセージをお願いします!
佐渡での起業を考えている方は、迷いがあったとしても、ビジネスコンテストに挑戦してみてほしいと私は感じました。私自身、色々と迷いや不安が積み重なって一人で追い込まれた経験がありましたが、ビジネスコンテストをきっかけに、様々な出会いが広がり今につながっています。ビジネスコンテストの応募段階から、出場までの準備、出場当日、その後佐渡に来るまで、佐渡に来て実際に事業準備をする段階、事業開始から今も尚、ずっとサポートをしていただけています。また、コンテストの準備は簡単ではありませんが、だからこそ申請できた時、出場者に選ばれた時、出場できた時など、一段ずつ階段を上るように自信になります。これらの経験を通して、ビジネスとは人とのつながりだし、実際にたくさんの面倒なことの積み重ねも避けては通れないわけなので、コンテスト自体がビジネスにおける良いトレーニング期間になっているようにも思います。もし迷っている方がおられたら、私が背中を押したいと思います!Go Go!